屋上の柵に足をかける人

就活中、精神病を患った。社会が求めているものに、自分をすり合わせている気がして自信を失った。模範的な就活生でない自分は、世間から求められていない人間なのだと思った。

生きるやる気が出ず、殺してくれと思った。独房のような狭い大学の寮、薄い壁と知っていながら毎日叫ぶように泣いた。同じ学年の寮生は、“いい就職先”を見つけ、“いい友人”として私を心配した。その心配がとてもつらかった。

私は安定のために理系大学に進学した。それなのに、斜陽産業と言われている出版社を受け続けた。その理由も曖昧でミーハーな自分は、本当に出版業界を志している人に勝ち目はない。なのになぜ諦めることができないんだろうと思っていた。

かろうじて出版業界で働けるようになったものの、安月給。生きるのが本当に苦しい。だけどなんで他業界に転職したいと思わないのだろう。

最近、その理由がわかってきた気がする。

あなたと知らない人が屋上にいる。知らない人が柵に足をかけようとしている。

きっと、あなたは声をかける、抱きしめる、大丈夫だよって。

言葉にはそんなパワーがある。肌と肌で触れ合わなくても、知らない人でも温かく包み込むことができる。

屋上の柵に足をかけようとしている人は、自分自身だったりするのだ。

私は、自分のような生きるのがつらくて、毎日隕石を望んでいるような人を、抱きしめたいんだと思う。

頭がいい人、美人な人が正とされる世の中。全ての人が正だって思える未来を、自分のような人間にプレゼントしたいのだ。

大丈夫。大丈夫。ちょっとずつ前に進もう。今の道で間違っていないよ。

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