奇跡のような毎日

※こちらは、私が育てているハムスター「ななし」が人間だったらこんな恋をしたいなと思って書いた作品です。正気の沙汰ではありません。ご理解がある人だけお読みください。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

私は人気アイドル「chiro_choco」のメンバーななしと付き合っている

彼は週刊誌に追われているため、手を繋いで水族館デートをすることはおろか夜中に2人でコンビニへ行くことすらできない。

出会いは高校時代。図書委員をしていた私。彼は高校時代からアイドル研修生として注目を集めていた。そんな彼が唯一心を休められる場が図書室だったのだ。告白は彼から。たくさんファンがいる彼と付き合うことは重荷だったが、何回も気持ちを伝えてくれて付き合うことになった。

今は2人で同棲しているものの、忙しいななしとはすれ違いの生活。職業柄仕方ないとはいえ、この声も顔も独り占めできないのが寂しい。

『あのさ、今日家に帰ったら話したいことがある』

突然のLINE。今まで「話したいことがある」なんて言われたことがなかったから動揺している。何も音沙汰がなくて、急にこれ。絶対悪いことだよね。

あー、なんだかモヤモヤする。心を落ち着かせるために、テレビをつけた。

「人気アイドルグループchiro_chocoのメンバーななしさんと女優の真旺さんが熱愛」

テレビニュースでは、私と付き合っているはずのななしの熱愛報道をしていた。

ななしはそんなことをするはずがない、やさしいし背も高いしかっこいいしそつなくなんでもこなすし。完璧だから他の女性は放っておかないと思う。だけど、私だけを思っていると心から信じている。このまま家にいたら私、どんどん気持ちが沈んでしまう…。重くなった心を軽くするべく、私は外に出た。

外に出たものの何をしようか…。もう夜も遅いし、お店もやっていない。なにやっているんだろう、私。

自然と足が向いたのは、ななしと思い出の公園。1回だけ2人で外に出たことがあった。2人深くキャップを被ってタピオカを飲みながら話したな。あの時間がとてつもない奇跡に思えて涙が出てきた。

ななしが今日話したいことがあるって言っていたな。きっと別れ話ではないと思う。でも、報道をみてしまったので心穏やかなわけではない。帰ろうとしたそのとき

『ぴい!』

大きな声で話しかけてきたのは、愛おしい人、ななし。私を見つけて走ってくるやいなや抱きしめてきた。

「なにしているの!ここ外だよ!」と訴えると、よりいっそう強めてくる。ななしの甘くてあたたかい匂いに涙が出そうになった。

『報道みた?ごめん。でも、真旺さんとはなにもないんだ…。信じてほしい』

「うん、信じている。大丈夫だよ」

『ドラマの打ち上げでたまたま帰りが一緒になった、それだけ』

「うん。ななしがこんなに私に惚れているのに、疑うわけないじゃん」

『ありがとう。愛してる』

ななしとは、一生結婚できないと思う。ななしの仕事も大切にしたい。このまま2人の関係がなくなるかもしれないし。未来のことはわからない。

でも、こうやって一緒に過ごせている奇跡のような時間を大切にしたい。私こそ愛しているよ、ななし。

タグ: